「葬儀なんてするものか」
疎遠だった実のお母さんが急死したという報せを受け、当寺へいらしたAさん。いらした当初は、(葬儀を行わない)直葬をお望みでした。
Aさんはお父さんが早くに他界されたうえ、20歳の頃、お母さんが家を出て行ってしまい、以来、お姉さんとふたりで生きてこられました。ご苦労も多かったことでしょう。
出て行ってから数十年、お母さんとはほとんど会うことがなかったそうです。
■「80代のお母さんが亡くなった」と警察からの突然の連絡
ある日のことでした。
「80代のお母さんが亡くなった」と警察から突然の連絡を受けました。
自死だったそうです。
お参りだけは行いましょうとお話合いをして、Aさんは、「葬儀なんてするものか」というお気持ちを抱えながらも、義務的に枕経~初七日~通夜~葬儀までを執り行いました。
そんな中、葬儀場へ集まった皆で話していると、ぽつりぽつりと「小さなころの旅行」や「後悔している喧嘩」のことなどが語られ、色々な出来事が思い出されました。
そして、Aさんはこれまで、まるでお母さんの思い出を封印するかのように、お母さんが好んでいたテイストの服や好きだった物などを敬遠していたことに気付きました。
出棺の際、Aさんは涙を流されていました。
■「葬儀をして良かった」
葬儀を終えた後、Aさんとお話をしました。
Aさんは、あれほど敬遠していたはずのお母さん好みの服を、好んで選ぶようになったと言います。
はじめは義務的だったけれど「葬儀をしてよかった」と、打ち明けてくださいました。
今では、「親孝行できなかったから」とお墓参りを欠かさずに行い、墓前で心を交わすと心が落ち着いて気分がよくなるとおっしゃっています。
■枕経~通夜~葬儀という儀式の過程が大切
Aさんのお話をお伺いし、お弔いには、枕経~通夜~葬儀といった過程が大切だと改めて実感しました。
枕経~お通夜~葬儀と進む時間の中で、亡き方、そして自分自身と向き合う過程が生まれ、過去とのケジメがついたり、心を整理して乗り越えるきっかけとなります。
最初は怒りの感情を抱えながらも、儀式の過程で少しずつ感情を吐き出して、気持ちに整理がつくと、Aさんのように怒りが涙に変わっていくことがあります。
Aさんは今、
・儀式を通じて過去とのケジメがついた
・葬儀後、母の日や誕生日など、大切な日にお参りして時間を共有するようになった
・亡くなった後も見守ってもらっているという安心感に包まれている
・お母さんは、見守ってくれる仏さまとして心の中で生きている
という想いを、日々感じておられるそうです。
「同じような状況にいらっしゃる方に、少しでも救いのご縁になれば亡き母も喜んでくれると思う」ということで、このお話の掲載をご快諾いただきました。
Aさん、ありがとうございました。
悲しみの終活を感動と絆へ
皆様のお心に寄り添う お葬式・永代供養墓・納骨壇・樹木葬 の願隆寺
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